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十和田湖で南祖坊に敗れた八郎は、流浪の末、現在の山本郡琴丘町鹿渡の天瀬川に流れついた。そこで太郎は親切な老翁と老婆の住む家に泊めてもらったが、その夜中に恩荷(おが)島と陸をつないで大きな湖をつくることを神に祈願して、その許しを得ることができた。
夜明けに太郎は、世話になった2人に「ニワトリが鳴く声を合図に大地震が来て大洪水となる」と知らせ、2人を立ち退かせた。ところが、老婆が忘れ物の麻糸をとりに家へ戻ったとたんに暁を告げるニワトリが鳴き、大地が鳴動して湖となった。
洪水に流されおぼれそうになった老婆を太郎は足で蹴って対岸の八竜町芦崎へ上げたが、老翁は残ったので夫婦は別れ別れになってしまった。
後に老婆は姥御前神社として芦崎に祀られたし、老翁は三倉鼻に夫権現宮として祀られたが、ニワトリの鳴き声を嫌って、最近まで芦崎の家々ではニワトリの飼育をしない家が多かった。
そのころ、田沢湖には辰子竜が主となって住んでいたが、太郎と南祖坊はともに辰子竜にひとめぼれしたため、両竜は田沢湖上でふたたび激しい戦いをした。
だが、今度は太郎が勝って南祖坊を十和田湖に追い返し、太郎と辰子は夫婦の契りを結び、冬は田沢湖で一緒に暮らすようになった。それで田沢湖は冬でも凍らないが、八郎潟は凍結するのだといわれる。
(『秋田の伝説』(角川書店)より(以下角川))
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