昔、会津の諏訪神社の辺りには、朱の盤が現れるという噂があった。ある日の夕暮れ、 ひとりの若侍がこの辺りを通りかかると、同じ年頃の侍に出会った。若侍は噂の事を内心恐ろしく
思っていたので、早速その侍に話しかけた。そして、朱の盤について話した時、相手の侍は、 「で、その化け物はこのようなモノか」と言うなり、みるみる顔が赤くなり、化け物に変化した。
若侍は思わず気を失い、倒れてしまった。
それから一時間ばかりして目が覚めてみると化け物はおらず、自分は諏訪神社の前にいた。あわてて近くのとある家に入り、水を所望すると、そこの女房が心配して訳をたずねてきた。
そこで若侍がことの次第を話すと、女房は「さてさて恐ろしい目にお会いなされた。して、その 化け物とはかようなものでございますか?」と言った途端、先程の化け物に変化して、若侍は再び気を失ってしまった。
しばらくして若侍は目覚めたが、その後百日ほどして死んでしまったという。
参考 『妖怪事典』(毎日新聞社)