夜がふけてあたりがすっかり寝静まったころ、トントンと酒屋の扉を叩く者がある。主人が扉を開けてみると、暗闇の中に誰かが立っていた。
そのものは手にした笊をつきだして、「これに酒をついでくれ」といった。主人は、「そんなものに酒はつげないよ」と断るが、一向に帰ろうとしない。仕方なく主人は笊に酒を注いだ。すると不思議なことに、酒は一滴もこぼれることなく、笊に満たされたのだった。
それからは、毎晩のように夜がふけると決まって酒を買いにくるようになった。一体これは誰だろうということになり、ある夜、主人がそのものの後をつけていくと、普賢寺の東北にあたる地蔵堂のそばで姿が見えなくなった。
これはきっと地蔵さまが買いにきていたのだろうということになり、それからその地蔵さまはお化け地蔵という名で親しまれるようになったのだという。
今の槻木内の大方家の裏に祀られている地蔵さまがそれである。
参考 『小野町史』