蟹沢の裏山、通称五輪坂というところに、二基の五輪塔がある。塩沢家の墓所ではないかと言われている。
昔、ここに五輪塚真十郎という化け猫がいた。この猫が毎晩のようにでかけては朝帰りするので、不審に思った飼主がこっそり後をつけてみたところ、今の南宿、粟踏石までやってきた。
するとどうだろうか、そこには何匹もの猫や狐たちが歌に合わせて踊っているではないか。「ていらてい松、五輪塚真十郎、横内の紋次郎がこないうちは、さっぱり調子が揃わないネー」と歌っていたという。
ある夜、五輪塚真十郎がいつものように座敷から抜け出そうとするところを、おばあさんが見つけ、「コラ毎晩どこへ行く」と鋭く叱ったところ、真十郎は大いに驚き障子を破って飛び出した。そのときかぶっていた網笠を置き去りにして、それ以来、家に戻らなかったということである。
なお、歌に出てくる紋次郎も、これまたある晩でかけるところを主人に見つかってきつく叱られてからは、家にもどらなかったと言われている。
参考 『玉川村史』