永正年間、勢至堂に村はなかった。
あるとき、犬を連れた狩人が、山から山へと渡り歩き、この地にたどりついた。一休みしたら、朝からの疲れがどっと出て、ついうとうとしてしまった。犬が非常に騒ぐので、起きて呼べば尻尾を振って喜ぶ。うとうとするとまた犬が吠え騒ぐ。狩人は、なかなか寝付くことができなかった。
しかし、眠気は募るばかり。犬が騒ぐのをうるさく感じた狩人は、鉄砲の尻で犬をはたいてしまった。犬は、悲しい鳴き声をあげて死んでしまった。
ふと我に帰ると、大蛇が今にも自分を飲み込もうとしているではないか。狩人はあわてて鉄砲をとって、大蛇と戦いついに撃ち殺した。
狩人は後悔した。犬は自分を大蛇から守るために吠え続けたのだと思うととても不憫で、自分の浅はかさを悔やんで犬の供養のために石塔を立てたのだという。
大蛇は、向かいの龍ヶ峰の沼ヶ平にすむ龍だったともいわれる。犬のために立てた供養塔があるので、石仏という字名がつけられた。
参考 『長沼町史』