昔、蛇石村にすごい大蛇がいた。胴回りは3尺、長さは70尺もあり、山から山へと地にもつかずに這い回っていた。時おり山から出てきて田畑や人畜に被害を及ぼすので、村人は困り果て、非常に恐れていた。時の三春藩主秋田俊季公は、このことを聞き、なんとかして退治しようと何度となく勇気ある侍をよこしたが、その都度失敗に終わった。
藩の槍の指南番松井民次郎という者がこのことを聞き、単身蛇のすむ所へ向かって行った。その付近は川と岩と山とが神秘的なところで、何か隠れていそうな地形であって、近くの山頂には蛇枕という石があり、大蛇の住処といわれていた。ここで民次郎は大蛇と出会った。大蛇は鎌首を持ち上げてものすごい形相で民次郎をにらみ、一飲みにしようとした。民次郎は恐れず、槍を構え半刻もにらみ合っていた。
ついに大蛇は怒って襲い掛かった。民次郎は応戦したが槍を奪われ、やむなく短剣で大蛇の急所を突き刺すと、血が滝のように流れ、大蛇は音を立てて倒れた。あたりの部落は血の川になったという。
このことを聞いた三春公は大いに喜んで、松井に200石を与えたという。村人たちは安心したが、大蛇の祟りを恐れ、お宮を建てその霊を祀った。
蛇石の厳島神社境内に、大蛇の頭だったといわれる大石が残されている。
参考 『三春町史』