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斉藤の銀魚淵 
 

 西方の方から斉藤の方さ流れる大滝根川に、淵が7つあって、銀魚淵は一番上で西方屋敷のすぐ近ぐにある。川のそばを通る道は細い山道で、石の間をくぐってやっと歩いていて、川の水は石にぶつかってずない渦巻きになっていたので、渦巻淵とゆうていた。

 昔、この村に左衛門という釣りの名人がいて、いつも釣りをしていたが、今日は夏祭りで天気がいいのだが魚は1匹も釣れねえで昼飯になった。お祭りの赤飯(あかまま)を食うべと思って弁当を開けたとき、白髪の爺さまが出てきて「赤飯をもらいてえ」と言うので、くれたら喜んで食うてしもうと、姿が見えなくなってしもうた。

 左衛門は暑いので笠を顔の上に載せて昼休みしていると、「左衛門、左衛門」と誰かの声がする。笠の間から目を開けてみると、ずない狐が石の上に座って、尻尾を石にぶっつけると、「左衛門」と音が出てる。

 左衛門は「畜生、人を馬鹿にして赤飯を食いに来た狐畜生だったな。今に見ていろ、たまげらかしてくれっから。」と、「畜生」とずない声をあげて狐めがけて笠をぶっつけたら、狐はたまげて、淵さ落ちて、あっちむがいに逃げてってしもうた。

 今日はとんだ目にあった日だと、がっかりしてわげさ帰ろうと釣竿を上げべとしたら、なんぼ引っ張っても上がらねでいたとき、ちょうど西方の方から八兵衛というきこりどのが来たので、手伝ってもろうて、やっと上げたら、今まで見たことも聞いたこともねぇ6尺もあるずない銀魚が上がってきた。

 村中の人が聞きつけて、大勢集まって大騒ぎ。夏祭りが銀魚祭りに変わってしまい、みんなで銀魚の腹をわっつぁいたら、腹の中から赤飯が出てきたので、みんなたまげた。 左衛門は、「昼飯に赤飯を食いにきた白髪の爺さまは、淵の主の銀魚が化けたんだ。」と、大銀魚の頭を淵の近所さ埋めて、みんなで供養したんだ。 それからここを銀魚淵というようになったと。

参考 『三春町史』

   
 

 三春町南部の大滝根川流域に関係する伝説は、三春ダムの完成によって見られなくなってしまったものが多いのだが、ダム下流の斉藤地区あたりになると、川も比較的昔の姿をとどめている(と思う)。
川沿いに県道がくねくねと続き、伝説中に語られるようなやっとやっと歩くというほどではないものの、太陽の光も木々にさえぎられて、妖怪の1匹や2匹いてもいいような雰囲気である。

 伝説の中身はいわゆる「イワナ坊主」の別バージョン。普通は毒流し漁を止めようとしてイワナ等が坊主に化けて人間の前に現れるというパターンなのだが、ここではその辺の理由が欠如して、ただおいしそうだったからやってきたという流れになっている。狐の登場も脈絡がなく、語られていくうちに変わってきた話なのかもしれない。

 さて、現在の銀魚淵であるが、斉藤上の湯から数百メートル川をさかのぼったところにある。今でも良い釣りポイントだそうで、時折釣りをしている人もいるらしい。

 

銀魚淵。

   
  mapion
三春町斉藤。斉藤下の湯の少し上流道沿いに、小屋がある(はっきりしたことは忘れたが東北電力か水道局かなんかの施設)。その向かいのあたりが銀魚淵であるという。
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