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鼻取り地蔵
 

 西山の戸倉に鼻取り地蔵さまがあり、安産地蔵として、お参りの人が絶えない。

 およそ300年前、戸倉村に源衛門という百姓がいた。ある年の春の夕暮れ、源衛門は馬を使って一生懸命田んぼの代掻きをしていたが、山里の夕暮れは早い。たいして仕事もはかどらぬうちにやがてあたりは暗くなりはじめ、馬も疲れ果て、押しても引いてもビクともしないという有様だった。

 源衛門が途方にくれていると、どこからともなく1人の小僧がやってきた。そして、声もなく馬の鼻を取ると、不思議と馬は動き出し、日の落ちる前に代掻きはすべて終わったのだった。

 源衛門は喜んで、子供に腹いっぱい飯をご馳走してやろうと思ったが、小僧は小川へ降りていく。足を洗いに行くのだろうと思って源衛門も降りていったが、そこに小僧の姿はなく、それからいくら探してもとうとうその小僧を見つけることはできなかった。

 不思議なこともあるものだと地蔵堂へ行ってみると、なんと地蔵様の足が泥で汚れている。「もしや、地蔵さまがおれの仕事を見て手伝ってくれたのではないか。なんとありがたいことだ」と源衛門は驚き、それからというもの、村人はこの地蔵さまを鼻取り地蔵さまと呼んで、厚く信仰したのだという。

参考 『鮫川村史』

   
    とっても普遍的な伝説。ハナドリ地蔵、またはシロカキ地蔵という名で、とにかくどこにでもある。お百姓さんにとって、シロカキというのがどれほどしんどい仕事だったのかがわかるような気がする。
 そして僕としても、新しいハナドリ地蔵の資料が出てくるたびに、見に行こうか行くまいか悩んでいたりするのである(^^;
 ここのお地蔵さまは、近くにある「戸倉の里」という施設の入り口にある周辺観光地図に載っていたので、取り上げてみることにした。お地蔵様は、道路沿いの小川を渡ったところに、きれいな着物を着て鎮座していた。
 

なんとも素朴な地蔵堂。気付かないかも。



3体の地蔵。どれがハナドリ地蔵だろうか。


   
  mapion
鮫川村西山戸倉。鮫川と古殿の境から伸びる県道を西へちょっと走ると、南側にある。

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