新蔵に次郎オンツァという魚とりの名人がいた。ある土用の丑の日に大きなビクを担いで大沼に魚とりに出かけた。大沼とは今の南湖のことで、そのころはまだ今のように大きくはなかった。
その日は調子がよく、2つのビクに魚が一杯になった。しかも今まで見たこともないような大きなウナギがかかった。次郎オンツァは得意になって、はずみをつけて家へ帰った。
ところが次郎オンツァが五郎窪あたりにさしかかると、にわかに黒い雲が出てきて、ついに激しい雷雨となり、沼の方で「カー」という音がした。そうすると前のビクの中で「オーイ」という返事がしたように聞こえた。
次郎オンツァが気のせいだと思ってさっさと歩いたところが、今度は沼の方から「五郎ーッ」と声がすると、「オーイ」という。驚いた次郎オンツァは、ビクを捨てて一目散に逃げ帰った。
そうしてそのウナギは大雨のために沼に帰ることができて、再び沼の主になったという。
参考 『白河市史』