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南湖の主と五郎窪
 

 新蔵に次郎オンツァという魚とりの名人がいた。ある土用の丑の日に大きなビクを担いで大沼に魚とりに出かけた。大沼とは今の南湖のことで、そのころはまだ今のように大きくはなかった。

 その日は調子がよく、2つのビクに魚が一杯になった。しかも今まで見たこともないような大きなウナギがかかった。次郎オンツァは得意になって、はずみをつけて家へ帰った。

 ところが次郎オンツァが五郎窪あたりにさしかかると、にわかに黒い雲が出てきて、ついに激しい雷雨となり、沼の方で「カー」という音がした。そうすると前のビクの中で「オーイ」という返事がしたように聞こえた。

 次郎オンツァが気のせいだと思ってさっさと歩いたところが、今度は沼の方から「五郎ーッ」と声がすると、「オーイ」という。驚いた次郎オンツァは、ビクを捨てて一目散に逃げ帰った。

 そうしてそのウナギは大雨のために沼に帰ることができて、再び沼の主になったという。

参考 『白河市史』

   
   市民の憩いの場として、春夏秋冬美しい姿を見せる南湖。白河藩主松平定信公が整備した日本で最初の「公園」として有名である。この話は、定信公がこの南湖を整備する以前の話というわけだ。今では明るく開け、主の存在など微塵も感じさせない南湖だが、かつては薄暗く不気味さを漂わせていたのだろうか。
 

南湖のボート乗り場。



南湖で泳ぐ水鳥たち。


   
  mapion
白河市南湖。観光地なので迷うことはない。北西に「五郎窪」の地名も見える。

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