むかしむかし、暑い夏も終わり気候のよい秋祭りの頃になると、西山の墓地石山に住む年頃の美女狐オヨシは双の平の創徳寺の裏山に住む創徳狐と米山薬師に住む与次郎狐を呼んで毎年にぎやかにお祭りをしていた。
祭りのご馳走を食べ、酒に酔ってくると「墓地石オヨシ、米山与次郎、双の平創徳さん来ないうちゃ、ねっから調子がそろわねえ、シッチョイサア、シッチョイサア」と囃しながら踊ったという。
こんな祭りを繰り返すうち、オヨシ狐と美男狐の与次郎狐は恋仲となり、大塩の狐石に住む長太郎狐の仲人で結婚することになった。
オヨシの嫁入りの祝儀には、地元の人々をはじめ大勢の人たちが招待を受けた。このころはこのような狐の祝儀に人間が呼ばれることがよくあり、大変喜んで呼ばれて行ったという。
はるばる米山から婿狐がお嫁さんを貰いにやってきて、高砂のめでたい謡もうたわれ、呼ばれた人も唄や踊りで夜遅くまでにぎやかにお祝いをしていた。
ところが、日中は良い天気だったのに、夜中になって急に強い雨が降ってきた。およばれの客は大急ぎでお祝いの包みを貰い傘を借りて家に帰った。
雨がやみ、夜が明けてからおよばれの包みをひろげてみると、その中には木の実や草の葉がたくさん入っており、また昨夜の雨で借りてきた傘は、朴の木の大きな葉だったのだという。
参考 『鮫川村史』