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信夫文知摺石    
 

 嵯峨天皇の貞観年中、この辺りに陸奥・出羽の按察使に任ぜられた源融公がやってきた。夕暮れ時にあるのに道もわからず困っていると、この里の長者が通りかかり、家まで案内されることとなった。

 公が長者の家におもむくと、長者の娘虎女(とらめ)が出迎え、その美しさに公は目を奪われた。虎女もまた公に心を奪われ、すぐに二人は深い仲になり、公はこの地に一ヵ月余りも留まったのであった。

 やがて公の迎えの者がここを訪れ、公は初めて自分の身分をあかし、再開の日を誓って去っていった。

 再開を待ちわびた虎女は、文知摺(もちずり)観音に来る日も来る日も祈りをささげ続けた。そして満願の日を迎えたが、いっこうに公がやってくる気配が無い。絶望し、嘆き悲しんだ虎女が、ふと見ると、文知摺石に愛しい公の姿がぼうっと浮び上がっている。虎女は急いで石のもとに駈け寄ったが、その姿は一瞬にして消えてしまった。

 その後虎女はついに力尽き、病の床に伏してしまったのだという。そして、ちょうどこのときに、公の歌が使いの者の手によって寄せられたのであった。

みちのくの忍ぶもちずり誰ゆえに みだれそめにし我ならなくに

参考『福島の伝説』(角川書店)

   
   上記の句は小倉百人一首にも詠まれ、さらにこの地は『奥の細道』にも登場、正岡子規もこの地で詠んだという、文学的にも有名な福島を代表する歌枕の地である。市内の観光スポットとしてもはずせない名所である。見学に料金がかかってしまうのだが、近くへ寄ったらぜひとも訪れよう。
 ところで悲しい伝説を持ったこの石は、源融の姿が浮び上がったということから別名「鏡石」とも呼ばれている。熱心に祈れば、想いの人の姿が浮かぶかもしれない…?
 

信夫文知摺石。

文知摺観音堂。
 

虎と融の墓。

虎が清水。
   
  mapion
福島市山口。観光地なので迷うことは無い。
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