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ささやき橋    
 

 聖武天皇の時代、杉妻町に大杉があり、その精が毎夜若侍に化け、村の娘おろすのもとへ通っていた。はじめは普通に接していたおろすだったが、やがてそのに不審をいだく。そこで、ある夜若侍の袴の裾に糸をつけた針を刺しておいた。
 そして明くる朝、その糸をたどってみると、針は大杉に刺さっている。かくしての正体はこの大杉であると知れ、村の談合の結果切り倒すことに決まった。

 しかし、いざ切るとなっても、なかなか一日では切ることができない。そして不思議なことに、次の朝になって見てみると、前日に切ったはずの切り口がきれいにふさがっている。
  こんなことが繰り返されるので、村人はと仲の悪いヨモギの精に相談してみた。すると、「木っ端を焼いてしまえばよい」ということであった。
 早速村人が教えられたとおりにすると、切り口がふさがることがなくなり、ようやく大杉を倒すことができた。
 ところが次は、切り倒したがどうやってもびくともしない。そこで陰陽師に占わせたところ、「木の精が娘との別れを惜しむ故であるから、かの娘に命じよ」という。娘が大杉にささやくと、果たして大杉は動き出した。娘は、「ささやいて曳きてかけたる橋なればあらさで渡れ信夫うき人」と詠んだという。

 また、この木でもって福島城内にを架けた。すると、深夜になると人影もないのにの上で誰かのささやく声がする。これは大杉の精おろすを慕ってささやくのだと噂された。城主が供養してやると、その後は止んだのだという。

参考 『福島の伝説』(角川書店)

   
   おろ杉の話は、実に様々な伝説を取り入れて成立している、福島市を代表する伝説のひとつである。市内のあちこちに関連伝説があり、それもいずれ紹介していこうと思う。
 さて、橋は現在、県庁の南、「杉妻会館」という県民会館の中庭の中にあるのだが、外から入ることはできない。ロビーを通って中庭に出ることになるので、カウンターの方に一言ことわって見学しよう。
 

「密語橋」と書かれたささやき橋。現在は石製。
   
  mapion
福島市杉妻町。杉妻会館の中庭にある。一度中に入らなければならない。
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