昔、龍徳寺の和尚さんがトラという猫を飼ってたいへんかわいがっていた。
何十年もたったある日、この辺り一帯は大干ばつにみまわれ、村人は和尚さんに雨乞いをお願いした。 和尚さんは身を清め、一心に天神竜神に祈り続けた。猫も和尚さんからはなれず、声を出したりして脇につき、7日7夜が過ぎた。
すると8日目になって、ポツリポツリと雨が降り出し、人や馬を助けたのだった。村人は大喜びであった。しかし、村人の中には、「これは猫の仕業ではないか」などという人もいた。
何日か過ぎたある葬儀の日、突然棺桶がフワリと浮くという大騒ぎがおこった。そして、次の日には、何者かが遺体を掘り起こし持ち去るという事件がおきた。和尚は騒ぐ村人を静め、犯人は必ず捕まえると約束した。
それからまた数日過ぎ、また棺桶が舞い上がる事件があった。和尚さんはその夜、墓地に隠れて様子を見ていた。丑三つ時になったころ、なにやら光るものがある。化け物かと目を凝らして見ると、なんとそれは猫の目であった。しかも、何十年とかわいがってきたトラであったのだ。
その口は耳まで裂け、目はランランと輝き、舌なめずりして、墓を掘り出したのである。和尚さんは持っていた槍で猫をひとつきした。
猫は重傷を負いながら後の山へと逃げていった。和尚さんはさらに追いかけ、ついにとどめをさした。その時飛び散った血で周辺の岩が赤くなり、今でも赤岩という。
猫の祟りは恐ろしいので、村人と共にこの地に猫の魂を祀った。猫塚と言われ、今では八雲神社が祀られている。今でも死んだ猫の魂は猫塚に集まるのだという。
参考 『ふるさといいつたいことづてきかせてたもれ』(霊山町立掛田小学校)