むかし、竜ヶ馬場に長者が住んでいた。
この長者は名馬を飼っていたが、ある時、その名馬が体中に汗をかいて帰ってきた。どこか体の具合が悪いのかと思ったが、その様子もない。次の日も、そのまた次の日も馬は同じように汗をかいて帰ってくるのだった。
不思議に思った長者が馬の後をつけてみると、なんと馬は竜ヶ淵にきて、竜と壮絶な決闘をしているではないか。互いに五分五分の戦いで、長者は息を飲んで見守った。そして、どうも馬のたてがみが邪魔になっているようであった。
たてがみを切れば馬は勝てるかもしれないと思った長者は、その日、馬が帰ると早速たてがみを短く切ってやった。
次の日、前日と同じように名馬の後をついていき、胸をときめかして竜との決闘を待った。しかし、決闘は相違して、馬は竜に負けて死んでしまった。長者はそこではじめて、馬のたてがみが邪魔などころか大きな力を持っていることを知り、名馬の死を慎んで竜ヶ淵に碑を建てた。それが竜淵記の碑である。
この碑は三つに割れて川に沈んでいたが、ある日、若者が川の中から一片の碑を発見し、付近を捜したら全部で三つ見つかりつなぎ合わせたのが「竜淵記」の碑である。この碑文を解読してその傍らに再建の碑「竜ヶ淵由来記」を建てた。
参考 『郡山の伝説』