■その1
むかし、おせんという嫁が柴木切りに山へ行き、あやまってナタを淵に落としてしまった。家に帰ったら「ナタをとってこい」としかられ、すごすごとナタを探しに戻っていった。
時間が経って嫁が帰ってこないので家人たちが探しに行くと、渕の底にナタがキラキラ光っていた。そして、渕の上の大石を蛇がなめていたという。
おせんが蛇に呑まれた渕なので、ここを「おせんが渕」というようになった。
石には蛇が這ったかと思われる形の溝があり、蛇が石をなめていたというので、「蛇ねぶり石」といわれるようになった。道路拡張のため壊されて今はない。
また渕には穴があり「おはぐろ渕」ともいって、この渕の水をはらいあげないうちに雨が降るといって底が出たことがないという。
■その2
むかし、糠塚のある農家におせんという嫁がいた。その姑は非常に意地が悪く、いつも嫁いびりをしていた。
ある日おせんは山の帰りにナタを忘れてきてしまった。おせんはこのことで姑にどんなひどいことをされるかわからないと恐れ、すぐに山へ引き返したのだが、途中で日が暮れてしまった。
道も見えず、どうすることもできなくなってしまったおせんは、思いつめてとうとう渕に身を投げてしまった。それからその渕をおせん渕と呼ぶようになったのだという。
身を投げたおせんは、大蛇に変化したのだという。大蛇は雨の降る夜になると渕から姿をあらわし、側の岩石を姑をのろいながらねぶり、その執念は岩石に穴があくほどであった。この岩石を蛇ねぶり石といったが、今はない。
蛇ねぶり石の東に、すり鉢を伏せたような小山がある。大蛇は岩石をねぶった後は、園山を幾重にも巻き、頂上に頭を乗せて寝ていたという。そのため、その山を蛇枕石と呼ぶようになったという。
参考 『郡山の伝説』(郡山市教育委員会)