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機織御前と沼ヶ淵
 

 田村町下行合の見渡神社に行合神社という鳥居があり、これが御前様を祀ったものであるという。

 むかし、高倉の羽広に弥五郎という人がいた。その娘はたぐいまれな美しさで、機織がとても上手であった。世話する人があって福原に嫁いだが、どういう訳か娘はその家を嫌って実家へ戻ってきてしまった。
  弥五郎は娘を家に入れず、婚家に帰るよう諭した。娘は仕方なく帰り路についたが、どうしても戻りたくない。やがて悲しみにくれながらガンジャ坂を通り阿武隈川の大平の渡しまで来た。
  その日は雪で、人足もおらず、女手で漕ぐこともできない。娘は沼ヶ淵の傍らにある大石のくぼみに身をよせたが、どうすることもできず、持ち物を残し、沼ヶ淵に身を投げてしまったという。

 それから数年後、行合の宮司が沼ヶ淵の岸にある大杉の手入れをしていたが、誤ってナタを淵に落としてしまった。
  これを拾おうとして水中に入ったところ、立派な御殿に行き着いた。そこには人の気配は感じられないが、かすかに機を織る音が聞こえる。宮司は恐る恐る中に入ってみると、この世の人とは思われぬ絶世の美女が、一心に機を織っていた。

 宮司に気づいた美女は、「ここはあたなが来るところではありません。早くお帰りなさい」といって、糸が巻かれた竹の細いクダを差し出し、「このシクダをあなたにあげましょう。このシクダは、いくら使っても糸がなくなりません。ただし、決して1日で使い果たしてはいけません。」と言った。

 宮司の女房がそのシクダを使ってみたが、いくら使っても糸がなくならない。
 不思議なものだと思って機を織っていたが、ある日夢中になりすぎて1日で糸を使い果たしてしまった。すると、糸を巻くシクダの芯が、かな蛇になって逃げてしまった。宮司が沼ヶ淵まで行ってみると、機織の美女が哀れな姿で浮かんでいたのだという。

 宮司は機織御前として祠を立て、娘を祀り供養した。現在その祠はのこされていない。

参考 『郡山の伝説』(郡山市教育委員会)

   
 

 日本伝説大系の「竜宮機」にあたる伝説です。沼ヶ淵の場所についてははっきりとわからなかったのですが、見渡神社にある「行合神社」の鳥居は確認できました。
  淵は阿武隈川と大滝根川の合流地点あたりだと思われるのですが、地元の方に聞いても「だいたいこの辺のことかなぁ」との回答。川岸には御前川原・御前田という地名もあるので、沼ヶ淵もこの側だと思うのですが・・・。もっとも、河川改修で流れが変わっていることも考えられます。さてさて。(06-12-05)

 

「行合神社」の鳥居。

谷田川と大滝根川の合流点付近。
   
  mapion 【Google Maps】
田村町下行合。見渡神社に鳥居が並んでおり、その中に「行合神社」というものがある。

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