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丸山おさん 
 

 昔本郷北河原がまだ原野で、松やクヌギ林で荒れ果てていたころのことである。 夜になると、丸山のちょうど現在観音様が建っているあたりに山の中腹から頂上にかけて点々と火がともり、静かに揺れながら進む光景は異様な眺めであったという。つまりこれが狐火とも狐の嫁入りともいって恐れられていたものである。

 いわゆるこの丸山を根城にしていた丸山おさん狐の婚礼をかねた勢力顕示の行進なのであったわけで、当時これに並ぶ狐としてホッコメ小次郎や北河原に住むクボオタツあるいは二本木オヨネなどがいたという。夜になると農家のニワトリやウサギを狙うので、被害防止のためニワトリは屋根裏か地上から高い場所に飼うのが常識とされていた。

 あるとき、大八郷村の捨蔵という者がお弓新田の親戚で婚礼があり、お膳についたご馳走をワラズトに包んで背中にしっかりくくりつけ、ワラジ酒に酔った足をふらつかせて西裏街道を抜け、林が続く北河原の細道を夕暮れの心地よい風に吹かれながら家に帰るとき、どうしたものか目の前に突然大川の流れがあらわれ、あるはずの無い川の記憶ももうろうとしてきて、「ままよ渡ってみよう」と裾をまくりあげてふんどし1本になって川を渡りはじめた。

 ふらつく足を一生懸命進めたが、いっこうに向こう岸にたどり着けず、腰まで水に浸って歩きに歩き続けた。どの位の時間が経ったであろうか、誰かに肩を叩かれ、その拍子に意識が戻るとそばに隣家の藤太が立っており、しかも蕎麦の花が真っ白に咲いている畑の中であった。そして、捨蔵が背負っていたワラズトの魚はすっかり消えていたのだという。

参考 『会津本郷町史』

   
  名のあるキツネの世間話。おさんが本拠にしていたという丸山は、現在は片側がけずられて痛々しい姿である。削られていない方には観音堂が立っている。
 

丸山の観音堂。

   
  mapion
大沼郡会津美里町丸山。市街地の南西にポッコリ立っているのが丸山で、その南東部分中腹に観音堂がある。
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