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歯形の栗  
 

 昔、この里にあきという名の十歳ばかりの少女がいた。あるとき、あきは半年ほども病気をわずらい、余命いくばくもないという状態になってしまった。

 あきは、病床に「生栗を食べたい」と言ったので、両親はなんとか食べさせてやりたいと思っていたが、初夏の頃であったので、いっこうに見つからない。それでも山中をひたすら探し歩いて、ついに一本の栗の木の下に埋もれていた栗を見つけて、喜んで子供に与えた。

 あきは大変嬉しがってその栗にかみついたが、歯を当てたままとうとう死んでしまった。両親は悲しみながら、亡骸と共にその栗も棺桶の中に納めてやった。

 後になってその栗が大木になったが、秋になると色づいて落ちる栗の実のいずれの実にも、歯形がついているのだという。

 しかし、不思議なことに、この木から苗木をとって植えても、歯形の実はならないのだという。

参考『福島県史』

   
   なんとも悲しく、かわいそうなお話。「あき」という名前は、秋を待って死んでしまった少女の悲しい運命を暗示しているのだろうか。
 さて、この「歯形の栗」の話だが、『福島県史』をはじめいくつかの地方自治体史には、「大熊町大堀」という地名が見られる。しかし、実際は「大熊町大堀」ではなく「浪江町大堀」である。大堀地区は昔大熊町内だったのだろうか・・・?あまりありえない話なので、これはおそらくみんな子引き孫引きで連鎖的に間違ってしまったのではないだろうか。しかし、『大熊町史』にまで「本町の大堀地区に・・・」と書かれてあるのはさすがに笑えないが・・・。

 栗の木は現在も墓場の真ん中で堂々と立っている。ただ、痛みが激しいらしく、多分に補強がなされている。これも、この木を愛する地元の人々の思いのあらわれなのだろう。たまたま通りかかった人に話を聞くと、今でも「歯形の栗」は採れるのだという。
 ちなみに僕が訪ねたのは、秋も過ぎ、冬もまっさかりのときだったので、栗の実などあろうはずもなく、一生懸命探してようやく一つイガグリを発見したと思ったら・・・中身は腐っていた。無念(^^;。秋に来るべし。
 

歯形の栗。


1個だけ発見した栗。

   
  mapion
浪江町大堀。県道からすこし西に入ると大きい墓地があり、その中にある。たしかこの辺だったと思う。

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