石神村蛯沢から北に田のあぜ道を進み、小川にかかる土橋を渡ると、うっそうと繁る森が行く手をさえぎる。急な峠道は前かがみでなければ登れぬほどで、春から夏にかけては海の方からもやが吹き上げ峠をすっぽりつつみこむのであった。峠に入ると間もなくしてお地蔵様が立っており、村人たちはこの峠を「ガスムキのドイコ」(洞窟のような)と呼んでいた。
この難所には昔、道行く人に砂を降りかけるという老婆が出没して旅人たちに恐れらていた。ボロボロの着物にザンバラ髪を振り乱した異様な老婆は旅人の跡をつけ、先回りしてスルスルと大樹によじ登るや、イッヒッヒーと不気味に笑いながらサラサラと砂を降りかけた。人々はこの老婆を「ガスムキの砂ふり婆ぁ」と呼んだという。
参考 『伝承いしかみのむかしばなし』(荒平・H16)