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サムトの婆

 ある時、松崎村の寒戸というところの民家で、若い娘が梨の木の下で草履を脱ぎ捨てたまま行方不明になった。

 30年ほど後のある日、親類や知り合いがその家に集まっているところへ、とても老いた姿でその娘が帰ってきた。どうやって帰ってきたのかと問うたが、「みんなに会いたかったので帰ってきました。また帰ります。」とだけ言うと、また去ってしまった。その日は、風の激しく吹く日であった。

 そんなことがあって、遠野の人は今でも、風の騒がしい日には「今日はサムトの婆が帰ってきそうな日だ」と言うのだという。


参考 『遠野物語』より


◆またたびの独り言◆

 「風に乗って帰ってくる」という幻想的な雰囲気の反面、「山の中で山人とともに生活していたのでは…?」という妙なリアリティーが背筋を振るわせる物語で、『遠野物語』の中でもお気に入りのひとつだったりする。
 30年という歳月の中で想像以上に老いてしまったり、それでもしっかり現世のことを覚えていたりと、人々の思い描く異界(=山の中)観が垣間見えるようでもある。

 ちなみに、「サムト」という地名は実際は存在せず、柳田が「ノボト」を聞き間違えたか、あるいは意図的なすり替えだったのではないかというのは有名な話。


「サムトの婆」のレリーフ。

★関連伝説地★

特になし

★アクセス★


遠野市松崎町光興寺。近くに登戸橋というのがあるので、それを目標に。市の観光マップにも載っている。


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