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志引石  
 

 昔、岩切村(現仙台市)の街道に大石があって通行の妨げになっていた。大勢の村人がこの石を除こうとしたが、どうしても動かすことができなかった。

 そんなある日、ある娘の枕もとに見知らぬ人が現れ、「あなたが紫色の着物を着て、紫色のたすきをかけ、あの大石にまたがれば、石は動くだろう」と告げた。

 そこでその娘は翌日、夢のお告げに従って紫の着物にたすきをかけ、工事の場に行き、困私に任せよといった。村人はそんなことができるものかと半信半疑で見守っていると、娘はその石にまたがった。

 すると、今までびくともしなかった大石はぐらっと動いたかと思うと、娘を乗せたまま宙を飛んで、はるか東の東田中村にふたつに割れて落ち、土中にめりこんだ。そして、乗っていた娘も石になってしまった。この石を志引石(しびきいし)という。

 また、この娘を祀ったのが近くにある志引観音で、その別当の家では、今でも紫色のものは一切使わないという。

参考 『多賀城市史』、『宮城の伝説』(日本標準)

   
   多賀城駅からしばらく行った、住宅地の一角に、遺跡のある林があり、そのそばに志引石はある。この石は千人で引いた石、つまり「千引石」(ちびきいし)がなまったものといわれ、現在では二つに割れたうち片方しか見ることができない。この話は異類婚礼譚ということになるのだろうか。「阿古耶の松」系の伝説である。
 

地面にうもれた志引き石。
   
  mapion
多賀城市東田中2丁目。保育園のそばにある。
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