昔、岩切村(現仙台市)の街道に大石があって通行の妨げになっていた。大勢の村人がこの石を除こうとしたが、どうしても動かすことができなかった。
そんなある日、ある娘の枕もとに見知らぬ人が現れ、「あなたが紫色の着物を着て、紫色のたすきをかけ、あの大石にまたがれば、石は動くだろう」と告げた。
そこでその娘は翌日、夢のお告げに従って紫の着物にたすきをかけ、工事の場に行き、困私に任せよといった。村人はそんなことができるものかと半信半疑で見守っていると、娘はその石にまたがった。
すると、今までびくともしなかった大石はぐらっと動いたかと思うと、娘を乗せたまま宙を飛んで、はるか東の東田中村にふたつに割れて落ち、土中にめりこんだ。そして、乗っていた娘も石になってしまった。この石を志引石(しびきいし)という。
また、この娘を祀ったのが近くにある志引観音で、その別当の家では、今でも紫色のものは一切使わないという。
参考 『多賀城市史』、『宮城の伝説』(日本標準)