■その1
昔、沼のほとりに長者が住んでおり、一人の姫がいた。姫は朝夕その美しい姿を沼の水面に写していた。すると、その美しさに見とれて、沢山の蛇が水面に集まるようになっていた。
ある秋の夕暮れのこと、一人の美男子がこの辺りを通り、長者の家に泊まった。姫はすっかり魅せられ、結ばれたが、翌朝、若者は旅立つことになり、姫はいたく別れを惜しんだ。
その後、長者の家ではさびしい毎日が続いたが、ある日、姫が草原で休んでいると、身体に異常を感じ、しばらくして子を産んだが、その子は蛇体であった。子はそのまま沼の中へ消え、それからというもの、沼の中から毎晩のように泣き声が聞こえ、やがて姫はその泣き声に惹かれて水中に身を投じてしまった。その後毎年五月の節句の日には、沼の中から機を織る音がするという。
■その2
昔、近くの茶屋の主人某という男がいた。この男はある時、天女が天下るのに会い、これは珍しくもったいないことであると、馬を雇って天女を乗せ、自分の家に連れ戻る途中、化女沼にさしかかった時、天女は男に向かって、「天女を乗せたことを決して他言してはならない、もし他言すれば何か祟りがあるであろう」と言うが早いか、沼に飛び込んで消えてしまった。
男はしばしあっけにとられ、やがて帰ったのだが、あまりの不思議さに、つい他人に話してしまった。しかるに格別の禍はなかったのだが、それ以来代々の家督筋の者が夭死するようになったのだという。
参考 『古川市史』、『宮城の伝説』(角川書店)、『宮城の伝説』(日本標準)