トップページ宮城の伝説仙台>各伝説    <凡例
 
源兵衛淵    
 

■その1

 ある五月雨の降る真夜中、源兵衛の家の戸をたたく音がした。源兵衛が眠い目をこすりながら戸を開けると、目も覚めるような美しい女が傘もささずに立っている。

女は、 「わたしはこの下の淵に長年住んでいる鰻ですが、明晩、賢淵の蜘蛛が攻めて参ります。そこで加勢をお願いしたいのです。ただ、『源兵衛ここに控え居る』とおっしゃってくれれば良いのです。そうすれば、わたしの勝ちになります。」と述べた。源兵衛はそれを承諾して女を帰した。

あくる晩、果たして淵で激しい合戦が始まり、水を打ち合う凄まじい音に臆病な源兵衛は震え上がり、女との約束どころか、家の奥にずっと隠れていた。

次の朝、源兵衛が恐る恐る家を出て淵をみてみると、水は血で真っ赤に染まり、大鰻の頭が源兵衛を睨んで横たわっていた。それを見た源兵衛は気が狂って死んでしまったという。

源兵衛淵では毎年決まって溺死者がでるが、それは鰻の祟りであるという。

■その2

 昔、毎年お盆になるとこの辺りにやってくる坊さんがいて、家々で盆棚のお下がりを馳走になっていたのだが、その坊さんは少しも年をとった様子が無く、いつも変わらない顔をしていた。

ある年、やはりその坊さんがやってきて、とある家を訪れた。その家には若者が集まっていて、毒流しをして川の鰻を獲ろうと相談していた。坊さんはそれを聞きつけると、しきりに止めさせようとする。そして、その日は麦飯を馳走になって立ち去った。

坊さんについておりから不思議に思っていた若者たちは、その言動を怪しみ、その中の源兵衛が跡をつけることにした。源兵衛が急いで跡を追うと、坊さんは崖を下り、淵にすうっと吸いこまれるように消えてしまった。

その後毒流しは行われたが、その時大きな鰻が浮かび上がり、その腹を裂いてみると麦飯が出てきたという。

参考 『仙台市史』

   
   レトロな雰囲気の霊屋(おたまや)橋のたもと、2種類の伝説が伝わる源兵衛淵。川の東側が崖になっていて、確かに淵の痕跡をとどめている。

 その1・その2ともに類型的な伝説で、県内だけでも数ヶ所ずつの類似伝説を見ることができる。

 その1の伝説は、同じ広瀬川の数キロ上流にある藤助淵にもほぼ同じ形で伝わっている。これだけ近い場所で同じ話というのも珍しいものだが、賢淵の蜘蛛といえば、よほど有名な存在だったのだろうか。
 話をそのまま鵜呑みにすれば、賢淵の蜘蛛は藤助淵、源兵衛淵へと勢力を広げたことになる。広瀬川戦国時代・・・悠久の流れを眺めながら、そんな空想にふけってみるのもいいかもしれない。

 その2の伝説は「イワナ坊主」型の伝説。ここのように、イワナのかわりにウナギになっている場所は他にもあるようだ。「ウナギ坊主」とでも名付けようか。イワナとウナギで統計をとってみたらどうなるだろうか。単純に考えれば、イワナが捕れる場所ではイワナ、ウナギが捕れる場所ではウナギという結果になるはずだが・・・。
 

霊屋(おたまや)橋。

橋の下。
   
  mapion
青葉区米ヶ袋1丁目。霊屋橋の下。
 トップページ宮城の伝説仙台>各伝説    凡例