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賢淵(かしこぶち)    
 

 昔ある男が、この淵で釣りをしていると、どこからともなく一匹の蜘蛛がやって来て何か汚いものを男の脛になすりつけた。

 男はそれを拭い取って近くの柳の大木の根本になすりつけた。
 すると、蜘蛛はまた男になすりつけてくる。男はまたそれを木になすりつける。そんなことを数回繰り返すうちに、突然柳の大木が恐ろしい音をたてて淵の中に根こそぎ引きこまれた。

 その男があっけにとられていると、水の中から「賢い、賢い」という声がした。それからこの淵を「賢淵」と名づけたという。

参考 『仙台市史』

   
   仙台ご当地ソングと言えば『青葉城恋歌』。「♪ひろせがわ〜」で始まるが、北風の吹く中、牛越橋からその広瀬川をさかのぼる。ちょうど季節は「芋煮」の時期で、どこぞの学生サークルやら老人ホームのグループやらが、川原で鍋を囲んで昼間っから飲んだくれている。そんな賑やかな中を通りぬけると、川は大きく左にカーブ。そこの対岸、切り立った崖の下に、本流と孤立した池のような淀みがある。深緑が不気味なこの淵こそ、有名な「賢淵」である。
 今こうして見るとぞっとするが、かつては水泳の授業も行われていたくらい、泳ぐのに良い淵だったそうだ。当然水の事故というのもあっただろう。そのような水に対する恐怖の念が、「賢淵の化蜘蛛」を生み出したのかもしれない。

 さて、広瀬川から、川沿いを走る国道48号に戻り、少し行くと、賢淵の蜘蛛を祀った塚があると聞いた。しばらく迷ったが、今はもう廃屋になってしまっている建物の影に発見する事ができた。なにやら色々な塚が雑然と立っているところだったが、蜘蛛の塚は、誰にも気付かれずに、すっかり落ち葉に埋もれ、小さな鳥居も倒れてしまっていた。「妙法蜘蛛之霊」とある。丁寧に落ち葉を払い、鳥居を立て直し、合掌。この塚がいつまでも残っていますように…。
 

賢淵の様子。

蜘蛛の塚。
   
  mapion
青葉区八幡5丁目。川の東岸の道なき道を歩いていくと、崖の下に池のようにして淵がある。
蜘蛛の塚は、淵の崖の真上、国道沿いの廃屋の裏手にある。塚がいくつかかたまって立っている場所なので、気をつけて探すべし。

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