昔、実沢の永沢家の人が仙台城下町へ駄馬で薪売りに中山道を通っていた。ある夕方、月急(がつき)坂で一頭の狼が口中に骨をひっかけて苦しんでいた。馬子は「骨をとってやるから害するなよ」といって骨をとってやった。狼は感謝する仕草で笹薮へ去った。
その晩、馬子の家の庭先でドシンと音がしたので夜明けに見ると、一頭の猪が置いてあった。狼のお礼であったのだろう。
それからは馬子の城下帰りの途中、狼が後になり先になり戸平山まで送るようになった。その後、馬子は昼の握り飯を2つ用意し、1つ残して別れるころ狼にやった。後年、その馬子が亡くなったとき、戸平山で悲しそうな狼の遠吠えがしたという。
戸平山の「三峯山」の石塔は馬子の子孫が立てたもので、毎年4月1日のおにぎりを供え大きな声で「狼どんおぼたてにきした」と叫んでおにぎりを沢谷に落とした。昔はその声で狼が集まっても、害することがなかったという。
参考『泉市史』