さらかぞえ(皿数え)


 
 

 井戸からあらわれて、かなしそうな声で皿を数える妖怪。「1まい、2まい、3まい・・・」と数えるのだが、さいごに「1まいたりない・・・」といってなきさけぶのだという。

 これは、そのむかし、ご主人様のだいじな皿をまちがって1まいわってしまった女のゆうれいなのである。

<妖怪情報より>
・お菊さんは皿を割ったんじゃなくて隠された… 約450年前の室町時代中期、姫路城執権の青山鉄山 は、城を乗っ取ろうと、城主を増位山の花見の宴で毒 殺しようと企てていました。
 それを察した城主の忠臣、衣笠元信(きぬがさもと のぶ)は、愛人であるお菊を鉄山の屋敷に奉公させて 企みを探らせ、鉄山の息子小五郎から父の陰謀を聞き 出しました
  この知らせを聞いて元信は、花見の宴で城主を毒殺 しようとする鉄山の陰謀を阻止することができまし た。その後もお菊は、鉄山の屋敷で動向を探り続けていましたが、鉄山の同士町坪弾四朗(ちょうのつぼだ んしろう)に気づかれてしまいます。
  ところが、以前からお菊に好意を持っていた弾四朗 は「黙っている代わりに自分のものになれ」とお菊に言い寄りました。しかし、お菊はその条件を聞入れ ず、弾四朗に折檻されます。それでも強情に言うこと をきかないお菊を憎らしく思うようになった弾四朗は、ある日、お菊が預かる家宝の十枚の皿うち一枚を 隠してその罪をお菊に負わせ、ついにお菊を切り殺し庭の井戸に投げ込みました。(フォッシュ)

・本当は家老が家をのっとろうとしていたことを知って しまったお菊は、家の人に伝えて 危機を救ったが、それを恨んだある人が皿を隠し、お菊を井戸の落とし た。(すねこすり)

・お菊と、呼ばれている。番町皿屋敷に住んでるらしい(クロ〜ス)

・お菊は、ある男の妻でした。


ある家の下女十の皿を一つ井におとしたる科にて害せられ、その亡魂よなよな井のはたにあらはれ、皿を一より九までかぞへ十をいはずして泣叫ぶといふ。(『今昔画図続百鬼』より)


たらこ作


抹茶作


飛燕作


キア作


斬作

 
 

◆ものがたり◆

※ 少しざんこくでこわいお話です。

 むかしむかし、江戸時代(えどじだい)のお話。

 江戸(※1)の番町にというところに、青山主繕(あおやましゅぜん)という、それはそれはごうまんで、自分かってなさむらいが住んでいました。

 そして、青山のおやしきには、お菊(おきく)という少女が、めしつかいとしてはたらいていました。青山はお菊が気に入らず、毎日のように、お菊にいやがらせをしていたのでした。

★ ★ ★

 ある日のことです。青山は、とても高いねだんで手に入れた、美しい10まいの皿がお気に入りで、それをつかって食事をとっていました。そして、いつものように食事はおわり、お菊はそのあとかたづけをしていました。

「これはご主人さまの大事なお皿。ていねいにあつかわなければ・・・。」
と、お菊はいつもよりしんちょうにお皿をかたづけていました。

しかし・・・

「アッ!!」「ガシャーン!!」

どうしたことでしょう。お菊はいつもよりていねいにお皿をかたづけていたはずなのに、お皿が1まい、手からすべり落ち、われてしまったのです!

「ど、どうしましょう・・・」
お菊はあまりのできごとに、青ざめました。

 その時、お皿のわれた音にビックリした青山がやってきました。そして、われた皿を見ておどろき、いかりくるいました。

「バカヤロウ!!お前は、おれさまの大事な大事な皿を、1まいわりやがって!!よくもやってくれたな!!」
バシッ!!青山はお菊をなぐりたおしました。

「ご主人さま!おゆるしください!わざとではないのです!おゆるしください!」
お菊は泣きながら、頭を下げました。

「うるさい!!だまれ!!」
青山はそのあとも、なんどもなんどもお菊をなぐりつづけました。お菊はひたすらにあやまりつづけましたが、青山はとうとう、ゆるしてはくれませんでした。

 そして、なんと、青山は最後にお菊を井戸の中におとしてしまったのでした。かわいそうなお菊は、井戸の中で、かなしみながら死んでしまいました。

★ ★ ★

 次の日、青山はなにくわぬ顔で、いつもどおりのせいかつをつづけていました。

 その夜。青山がねむりにつこうとすると、どこからともなく女の声がきこえてきました。

「1まい・・・2まい・・・3まい・・・」

「なんだなんだ?」
青山は目がさめ、声のするほうへ行ってみました。

「4まい・・・5まい・・・6まい・・・」

声は、井戸のほうからきこえてくるようでした。青山は少しおそろしくなってきました。

「7まい・・・8まい・・・9まい・・・」

青山が井戸のほうを見てみると、なんと、そこにはきのう井戸に落ちて死んだはずの、お菊のゆうれいがいて、お皿を数えているではありませんか!

「アァーッ!! 1まいたりない・・・」
お菊のゆうれいが、かなしそうな顔で、青山をにらみつけました。

「ギャーッ!!でたーっ!!!」
青山はきもをつぶし、いちもくさんににげだしました。しかし、またゆうれいの声がきこえてきます。

「1まい・・・2まい・・・3まい・・・」

「わーっ!!お菊ゆるしてくれ!!ワシがわるかった!!ゆるしてくれーっ!!」
青山はもうおそろしくておそろしくて、とうとうおやしきから飛び出し、そのまま2度と帰ってくることはありませんでした。

★ ★ ★

 その後、青山のおやしきはだれも住まなくなってしまいました。そしてお菊のゆうれいの話は、町のひょうばんになりました。

 あるとき、そのゆうれいのうわさを聞いて、一人のおぼうさんがやってきました。

「そのゆうれいは、かなしいできごとがあったので、じょうぶつできないでいるのだろう。ワシがじょうぶつさせてあげよう。」

 夜になり、おぼうさんは、ゆうれいが出るという井戸の前で、おきょうをとなえはじめました。

 すると、お菊のゆうれいが、井戸の中からあらわれました。

「1まい・・・2まい・・・3まい・・・4まい・・・5まい・・・」
お菊はお皿を数えています。

「6まい・・・7まい・・・8まい・・・9まい・・・」
そこまで数えると、お菊のお皿がなくなってしまいました。

それを見たおぼうさんは、とっさにさけびました。
「10まい!!」

そのときです。お菊の顔が、かなしそうな顔から、うれしそうな顔にかわりました。

「おぼうさま、ありがとうございました・・・。これでわたしもじょうぶつできます・・・。」
そう言うと、お菊のすがたはあとかたもなくきえてしまいました。お菊は、ぶじにじょうぶつすることができたのです。

★ ★ ★

 それからというもの、青山のおやしきにお菊のゆうれいはあらわれなくなりました。人々は、かわいそうなお菊をあわれんで、みんなでおまいりをしたということです。

 

(※1)江戸・・・今の東京都。


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